忘れ物

忘れ物

あとがあるとは限らない。
赤茶けた道路を横断しながら、あの一瞬を振りかえっていたが
猛スピードで近づいてくる車に気負い負けしたのが災いの元。
歩道にわたった途端に何を考えていたのか忘れてしまったのだ。
あの記憶は車に踏み潰され消えてしまった足跡のように
薄く引き延ばされて、僕の見つけにくい場所に逃げ込んだのだろうか。

すこし暖かくなって

溶けた氷河の一滴一滴が

しだいに流れをつくってどこかへ流れていく時

川のようなものが見えないからといって

流れていないとはいえないかもしれない。

僕達の知らないところで脈々とつづくえいえんに

そっと耳をあてることができるのなら

その変わることのない鼓動の中にに何が見つかるだろう。

===========================
無断転載を禁じます

Written By GloomyWind 2003/2/26
===========================


© Rakuten Group, Inc.